前回はコシナのマクロプラナーを紹介いたしましたが、今回は同じくコシナ製のアポゾナーの紹介です。
プラナー(Planar)とかゾナー(Sonnar)とかディスタゴン(Distagon)などのレンズ設計による名称や、頭に付いているApo(アポクロマート)の意味などは専門サイトに譲ります。
マウントアダプターはSIGMAのMC-11を使用しております。SONY α7Ⅲとのコンビネーションで使い始めてから一年以上経過したので、作例とともにレンズレビューをしてみたいと思います。
Carl Zeiss(カールツァイス)Apo-Sonnar T* 2/135 ZE
歴史
2013年7月25日、コシナからCarl Zeiss(カールツァイス)Apo-Sonnar T* 2/135 ZE発売。メーカー希望小売価格は¥200,000-(税別)
2021年現在は、中古しかないわけですが、比較的状態の良いものはなかなか出回らない状況のようです。
近いと思われる現行モデルはMilvus2/135で、メーカー希望小売価格は¥226,500-(税別)。SONYのAマウントZEISS(SAL135F18Z)で、メーカー希望小売価格はやはり¥200,000-(税別)。2021年6月現在、ソニーストアで購入すると¥180,000-(税別)のようです。
スペック・基本仕様
対応マウント | キャノンEFマウント |
---|---|
レンズタイプ | 単焦点 |
フォーカス | MF |
レンズ構成 | 8群11枚 |
絞り羽根枚数 | 9 枚 |
焦点距離 | 135 mm |
最短撮影距離 | 0.80 m |
最大撮影倍率 | 1:4 倍 |
開放F値 | F2.0 |
画角 | 15.6~18.7 度 |
フィルター径 | 77 mm |
最大径×長さ | 84×107.8 mm |
重量 | 930 g |
レンズ構成図
箱に載っていたCarl Zeiss Apo-Sonnar T* 2/135 のレンズ構成図です。ゾナータイプではあるようですが、ゾナーの3群6枚と比べると、何がどう足されてこうなったのか?。現行のミルバスとレンズ構成図が似ているので、前玉3枚と6枚目が異常部分分散性の特殊ガラスなんでしょうか?。金属鏡筒と相まってレンズの塊!。重いです。
α7Ⅲに装着した姿
マウントアダプターはSIGMAのMC-11で、価格は¥37,500-(税別)。価格.comの最安値は2021年現在で21,117円(税別)。SIGMAの製品は今のところこのマウントアダプターしか持っていませんが、この製品に触れいつかはレンズも使ってみたいと思わせるのに十分なものです。素晴らしい制度と質感、正直惚れました。
電磁絞りで開放測光しています。レリーズボタンを押すと瞬時に絞られシャッターが切れます。ファインダーを覗いていると開放なのでピントの山も見やすく合わせやすいのですが、望遠と言うことで拡大表示していると1mmのズレも許されないほど動きます(笑)。被写界深度のイメージは絞りプレビューで見るか、撮影後の確認となります。何よりレンズ情報とF値が残るのが嬉しいです。
ギリギリまで大きな前玉があり、見た目も威圧感があるほどです。
付属の金属フードは望遠だけあって長いです(リバース装着可能なバヨネット式のレンズフード)。「この程度で重いだのでかいだの言っていては最高画質は得られませんよ」と教えられているかのようです。
星を撮られる方は、ここにヒーターを巻くことで結露防止になるそうです。
マウントアダプターにフードの長さが加わり、最短撮影まで繰り出すとこんな感じ。フォーカシングはコシナらしい独特のヌメリを感じるような重めのトルク。回転角の割にジワリと動き、非常に合わせやすい。三脚座はないので三脚使用時はブレが収まるまで待つ必要あり。マクロスライダー装着時もレンズを持ちあげながらスライドさせる必要あり。
絞りの変化による描写の違い
開放の周辺減光はまずまずあります。この画的には周辺減光というより、全体的に落ちているような気もします。三分の一段絞ると整います。普段f/11よりも絞ることが少ないので、この作例もf/11までしかありませんでした。実際はf/22まで絞ることができます。
Apo-Sonnar2/135とMakro-Planar2/50の比較
画角の違いが出て面白いですよね。奥行き方向の距離が圧縮される135mmに対して、横方向の写る範囲が広い50mmは画角内に沢山の花が収まっています。またチューリップの側面近いところまで見えている135mmに対して、前面が強調される50mm。
主題に端正なイメージがでていることや、ボケのイメージは135mmが気持ち良いですね。桜を密集させるのとは違い、主題がある程度の大きさで、背景の花が詰まっているのは50mmで、あとは好き好きといったところか。
Carl Zeiss(カールツァイス)Apo-Sonnar T* 2/135 ZEの作例
作例の順序は単純に撮った順です。
チューリップに寄り添うネモフィラとリナリア
f/2、1/3000sec、ISO-100、WB-5800K 2020-04-08
レンズ購入初期にマクロプラナーと撮り比べた一枚。被写体を同じくらいの大きさに収めようとした場合、離れた位置からの撮影となるので、その比で被写体付近の距離は同じ開放でもピントが合います。望遠独特の背景ボケはリッチで、より浮き上がった被写体に感動。
ガーベラ・ハイキー
f/11、1/20sec、ISO-100、WB-5900K 2020-04-24
半透明のごみ袋2枚重ねで使用して、窓からの直射日光をディフューズしています。逆光の撮影、手前にレフ板。背景の白い部分がA2サイズくらいで狭いので、135mmの画角の狭さを利用しています。f/11まで絞った作例として。
透過のガクアジサイ
f/5.6、1/100sec、ISO-100、WB-5100K 2020-06-07
左奥からの自然光で、ガクの透過光を表現しました。何だか雰囲気が良いんですよね。
ガラスの林檎
f/4、1/10sec 、ISO-100、+1.3EV、WB-5350K 2020-07-23
ガラスと言うテーマをいただき撮影したもの。昔、文字入れしてもらって購入したガラスの林檎です。画面内に主題意外にピントが三か所来るように、花の流れを意識しました。
これも135mmならではの画で、50mmの焦点距離と比べるとYuki no SakeのYの左とeの右に余裕があります。
風鈴の音色
f/2、1/250sec、ISO-100、135mm、WB-4950K 2020-08-23
短冊が一斉に踊りだし、舌(ぜつ)が奏でる。ターゲットを同じ大きさで写す場合、50mmと比べると必然的に135mmは被写体から離れるので同じf/2の開放でも、被写界深度の余裕があります。背景から気持ち良く浮き出るのも特徴。
デパートの解体
f/5.6、1/350sec、ISO-400 2020-09-23
モノクロらしく、隅々まで気を抜いていないかのような描写。フルサイズセンサーを活かした白から黒までの階調が気持ち良いです。
帯染まる
f/2、1/3200秒、ISO-400、WB-5250K 2020-11-29
犬山寂光院にて、わかっていらっしゃる方々。紅葉も美しかったのですが…。被写体までの距離があったので、開放にしてISO-100にするつもりが、間に合いそうもないので設定途中でパシャリ。
上皿天秤
f/4、1/6sec、ISO-100、WB-4500K 2021-01-22
以前ヤシコンマクロプラナー60mmで撮影した上皿天秤を、別画角コシナアポゾナー135mmで再撮影。光も違うが、深みあるわぁ。
犬山城の龍神
f/2、1.0sec、ISO-100 2021-03-31
色収差の無いApo Sonnarですがモノクロ表現もイイ!。この画も画角の狭さを利用してます。これ以上寄ると、龍神の背中に左奥の柱が写り込んでしまいます。さらにLightroomでレタッチもしているので、Lightroom初期設定も載せておきます。
撮影時のイメージはあくまで上の画ですが、撮って出しはこうしてみると気持ち良い背景のボケに望遠らしく被写体が浮き出ています。
ネモフィラ
f/2.8、1/4000sec、ISO-100、WB-5300K 2021-04-08
白の中のネモフィラブルー。青い主題のピント面に並んでくれそうな二人の子を不等辺三角形で配置し、収まってもらうf/2.8。横方向の画角が狭くなるが、奥行きの白を寄せ、前ボケと後ろボケ。
アルコールランプ
f/2.8、174sec、ISO-100 2021-05-01
昔使い込んだものを清掃もせずに点灯。自身の灯りだけ、1段だけ絞りバルブにして180まで数える。ハイライト-100、シャドウ+100、下からの段階フィルターで明るさ補正。
ビヨウヤナギ
f/2、1/1600sec、ISO-100、WB-5100K 2021-05-26
最短撮影距離と言うテーマで撮影。面白そうな135mmとマクロスライダーで。あのラインはここに収り…、あの葉はここに収り…。結局被写体探し→撮影を3日繰り返しました。難しかったのですが、結果レンズの最短撮影距離の作例となりました。135mmの焦点距離でzeissとしては寄れる0.8m。
男梅雨の紫陽花
f/2、1/1600sec、ISO-100、WB-5100K 2021-05-26
梅雨入り後、雨が降らず…。ようやく降った後の晴れ間で撮影。中央左の萼(がく)と右上の萼(がく)と右下の葉の不等辺三角形でピント。水滴のプルプルを開放で表現しました。
Carl Zeiss(カールツァイス)Apo-Sonnar T* 2/135 ZEの総評
このレンズの半端ない描写力のおかげで、ヤシコン2.8/135MMJの出番がほとんどありません。気持ちに余裕がある時には撮り比べてみたいが…。
135mmと言う望遠は標準域のレンズと比べると本来使いにくい画角のはずですが、被写体から一歩引いて画作りすると、びっちりピント面に並べなくても花と蕾が気持ち良く浮き上がってくれます。135mmの割に最短撮影距離が0.8mと寄れるのも自由度を高くしてくれています。マクロプラナー50mmと同じようなペースで作例が溜まったのもうなずけます。しかしながらフルサイズセンサーとアポゾナーのコンビは、まだまだこんなものではなさそうです。
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